永く続くトレイルであるために

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今週末に試乗会・コース開放走行会・ショートDHレースを控える会員制MTB専用フィールド
『S-TRAIL』。

でも『S-TRAILって何? どんな場所? どんな人がやってるの? 』と疑問に思う方も多くいらっしゃるかと思います。そこで本日は、S-TRAILの“これまでと今”をご紹介させていただきます。少々長くなりますが、お付き合いください。(文責:S-TRAIL 松下)

S-TRAILって誰が運営しているの?

“任意団体 S-TRAIL”の主要運営メンバーは、

渕野 厚志(CJ DHI エリート)

山田 貴之 (CJ DHI エリート)

太田 匠 (CJ DHI エリート)

望月 敬太(CJ DHI エリート)

鈴木 聰豪(MTBライダー)

松下 壽 (CJ DHI チャレンジA)

の計6名。残念ながら顔写真付きでご紹介するほど有名な顔ぶれではございません。(苦笑

しかしながら、このうち4名はMTB DHI競技 CJのエリートクラスで安定的に決勝に進出できる実力を持ったライダー。人口わずか24万人ほどの静岡市清水区にこのメンバーが在住している事も何かの巡り合わせかも知れません。

この6名が本業の傍らでトレイル運営しつつ、約40人の会員のみなさまの協力のもと、ローカルコミュニティーとしてトレイルを維持管理している、それが『S-TRAIL』の姿です。

当初は何も無いただの山林だった

S-TRAILのトレイルプロジェクトが立ち上がったのは今から2年半前の2012年11月。MTB仲間でもある地権者の所有する山林で、トレイル開拓が始まりました。新東名 新清水ICすぐそばというアクセス性の高さは良いのですが、当初は何もない“山”でしかなく、手作業で一つ一つ倒木をどかし、草を狩り、シングルトラックを切り開く作業を1年ほど続けました。

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折しも、静岡のDHトレイルで閉鎖問題が起き、ハイカーや地主、地元民とトラブルにならずに安心して走れる『専用フィールド』の必要性を強く感じていた時期でもありました。

こつこつと作業を続け、最初は数人だったディグも、徐々にボランティア協力の輪が広がり、トレイルは伸長。その結果、約4分ほどダウンヒルを楽しめる穏やかなルートが開通しました。

しかし、人力での作業には限界があり、なかなか次のステージに進む事ができません。

そこで、2014年1月からは2台のバックホーを導入して、より本格的なトレイル造成がスタートしました。

初級者からトップDHライダーも満足できるトレイルに

既に初級者~中級者が安心して走れるトレイルは開通していましたので、次のステップは本格的なダウンヒルコースの造成です。

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バックホーを使い、地形を活かしたロードギャップジャンプや、ゴール手前のリズムセクション・テーブルトップやステップダウンジャンプもみるみるうちに完成。よりハイスピードでアグレッシブな走りを求めて、斜めに飛び出すトランスファージャンプや、ハイスピードドロップオフ、急斜面を駆け下る“岩落とし”、尖った岩が並ぶロックセクションなど、他のトレイルには無いS-TRAILならではのセクションが出来上がりました。

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これら上級者向けセクションは、ワールドカップに遠征するトップライダーが「海外コースにある巨大セクションに臆さず走れるように」との想いを込めて造ったもので、一部の上級者のみが走る事を想定しています。

そのため、一般の方が間違っても「挑戦しよう」と思わないように、あえて視覚的に「怖い」と感じる造りになっているのです。

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もちろん、全ての上級者セクションの横には安全に気持よく走れるためのエスケープラインを用意していますので、小学生キッズやレースビギナーの方にもダウンヒルコースを十分楽しく走っていただけますよ。また、中級者の方も無理にジャンプにチャレンジすることなく、縦の動きを楽しんでいただけるかと思います。(実はロードギャップも飛ばない方が速い説があったりします)

「怖さ」に打ち勝つ達成感を味わえる数少ない場所

これは私個人の意見ですが、MTBが本来持つ「ドキドキする楽しさ」においても、一定レベルの「怖さ」の演出は大きな意味を成すと考えています。


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例えばS-TRAIL名物であるロードギャップジャンプ。これまでの日本のダウンヒルコースに無いタイプのセクションで、初めて目にした人は「飛べる気がしない・・・」と呟きます。しかし、このロードギャップは水平に飛び出すリップと、懐が深くて長いバックサイド(着地点)を備えた安全に配慮した設計となっていますので、DHレース経験の豊富な上級者なら意外なほどに簡単にクリアできるのです。

当然ながら初めてチャレンジする時のドキドキと緊張感、そして飛べた時の達成感と浮遊感は特別なもの。上級者の方にとっては、MTBを始めたばかりの頃に感じた、「嬉しさ」のような感覚が蘇るのではないでしょうか。忘れかけていた「ドキドキ」。一度味わってしまうと、S-TRAILの虜になってしまうかも知れません。

海外に挑むライダーのメンタルトレーニングの場としても

また、海外に挑むトップライダーにとっても、視覚的な怖さとは常に向き合う必要があります。例えば、ロックセクションに高速に進入するには、かなりの「度胸」が必要ですが、S-TRAILで走り慣れておけば海外レースでロックセクションと出会っても、習熟によるメンタルの余裕が生まれるはずです。

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もちろん、世界を目指すライダーはどんどん海外へと出向きその過酷なコースに慣れるのが一番でしょうが、遠征費や滞在費の捻出など現実的に難しい面も多くあります。そこでS-TRAILでは、これから世界を目指すライダーにとって少しでも練習の場になるようなトレイルとなるべく、初級・中級の幅広いみなさまが楽しめるコースとは別に、より急斜面でハードなダウンヒルコースを伸長させてゆく計画です。また、そんな志を持つ若手ライダーを応援したい。

そして、レベルアップを続けるトップライダーに続いて、私たち上級者のレーサーもスキルアップを続けていきたい。そんな想いでS-TRAILに向き合っています。

上級者の評価はいただけた。次の課題は裾野の拡大

一方で、ジャンプセクションの動画や写真を見て「S-TRAILは危ない場所では?」と敬遠するご意見がある事も十分に承知しています。

しかし本当のところは、ほぼ全てのジャンプには安全かつ気持ちよく走れる迂回がありますし、初心者でも安心して走れる緩やかな斜度のシングルトラックも揃っています。

そんな「上級者しか走れないS-TRAIL」という一部の誤解を解き、幅広いみなさまに走ってもらいたい。そして、もっともっとMTBを楽しむ方の裾野を広げたいという考えから、4月11日、12日の両日で試乗会を企画しました。初めての開催にも関わらずご協賛いただいた各社様により、約30台の試乗車と30個の貸出用ヘルメットもご用意いただいております。本当にありがとうございます。

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今回ご用意した試乗コースは箱庭サイズにコンパクトにまとまっており、初心者の方をご案内して走る場合にも安心いただけると思います。

そして、12日(日)のショートDHレースでは、国内トップライダーのエントリーも予定されています。

順不同で名前を挙げさせていただくと、井手川 直樹選手、永田 隼也選手、黒沢 大介選手、清水 一輝選手、井本 はじめ選手、九島 勇気選手、加藤 将来選手といった日本のDHシーンを代表する面々に参加いただきます。

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12日のレース日に試乗会に参加される初心者の方々には、ぜひ彼らトップライダーの迫力の走りを間近で見ていただきたい。そしてカッコイイMTBの魅力を知っていただけたら、こんなに嬉しい事はありません。

一過性で終わらず、永く続くトレイルであるために

S-TRAILに初めて足を運ばれた方は、「これ、いくらかかってるの?」と、驚かれます。

もちろん、それなりにお金が発生しています。

バックホー2台の燃料や保守部品の経費、用地の借用金や仮設トイレの費用などなど、雑費を合わせると約120万円近くの実費が発生しています。(S-TRAIL会員のみなさまには、別途収支報告をさせていただきます)一定規模のトレイルの開拓維持は、当然ながらお金が掛かる訳です。

この経費を償却すべく、年会費や走行料を頂く事に加え、みなさまに楽しんで参加いただきながらも収益を得るため、過去2回レースイベントを開催しました。

それにしても、何事もやってみないと分からないものですね。レースイベントも参加人数が一定数増えないと黒字化が難しく、搬送用レンタカーの費用やスタッフ・マーシャルへの日当、その他経費などで利益がほとんど出ない事も。実体験が一番勉強になります。

黒字化にはまだ時間が掛かりますが、組織としてしっかりお金が回り、イベントスタッフ・マーシャルにも十分な日当をお支払いでき、来場者のみなさまの満足度が高まるフィールドとなる為にも、運営側の努力と工夫は続けてまいります。

私たち運営もまだまだ未熟ですが、施設利用料や会費を頂くからには、しっかりとトレイルを維持する責任があります。至らない点もあろうかと思いますが、お気付きの点などがあれば、ぜひ遠慮なくご意見をお寄せください。みなさまからのご指導と応援を頼りに頑張ってまいります。

そして、これからのS-TRAIL

S-TRAILは本格的なトレイルシーズンに入る11月を年度始めとしています。年中雪が降らない温暖な静岡だから、秋~冬~春をメインシーズンと考えているからです。

よって、4月11日、12日の試乗会&レースが今シーズン最後のビッグイベントとなります。

間もなく始まる本格的なグリーンシーズンに入ったら、CJレースやダウンヒルシリーズ、エンデューローナショナルシリーズに、各所のトレイルツアーなど、素晴らしい催しが一杯。私たちもそちらの参加に大忙しになりそうです。

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もちろん夏の間もS-TRAILは、会員のみなさまとディグ&ライドしたり、ゲストで来られるお客さまをお迎えしたりと、トレイル活動を続けてまいりますよ〜。

また、ショップ様単位での貸切走行会や、メーカー様のカタログ撮影や、雑誌・CMのロケ地としてもご活用いただけます。ぜひお気軽にご相談ください。


(井手川直樹選手出演の「京セラ トルク」TVCMもS-TRAILで撮影いただきました)

 

S-TRAILが急速に拡大してイベント開催を行うまでになったのも、6人の運営メンバーそれぞれの専門分野を活かした奇跡的な協力と、会員のみなさまの協力があってのもの。

一方で、6人それぞれ求めるものが異なり、時には意見が衝突する事も。至極当然のことです。だからこそ、お互いにサポートしあい、会員のみなさまにも助けていただき、この素晴らしいフィールドをどうやって「面白くするか」意見をぶつけ合いたいと思っています。

広大なエリアに、いくつものトレイルを広げられる場所、S-TRAIL。

この夢の様なプロジェクトは、まだまだ始まったばかりです。

 

以上、長文・駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
そして、今後ともS-TRAILへのご愛顧を宜しくお願いいたします。